2013年4月17日水曜日

第27回 NIJIの会例会 報告


NIJIの会第二十七回例会報告書

【日 時】2013327日(18002030
【会 場】北海道経済センター8
【テーマ】「企業と社員を守るために経営幹部がやるべきこと」
~失敗から学んだことをお伝えします~
【講 師】おおもと経営相談室、室長の大本佳典
【出席者】第一部セミナー  企業参加者30 名;留学生5名;関係者 4
第二部交流会   企業参加者 19名;留学生 5名;関係者4

講師の大本氏




会場の様子


受付の様子


留学生の自己紹介


交流会の様子


セミナー司会の留学生

【講演概要】

 〈講師の略歴〉
大本氏は札幌出身で、名古屋である金融機関に勤めていた。その後札幌のタクシー会社にUターン就職。創業60年台数99台社員277人年間売上当時で14億円。札幌では比較的大手のタクシー会社だった。そこで人事労務、財務経理を担当し、最後の2年間は専務取締役だったが、残念ながら倒産。当時、倒産する前は資金繰りで四苦八苦。一人で悩んでいる経営者は結構多い。今回は失敗した原因、回避するため知っておくべきこと、大本氏が失敗から学んだことを伝える。

 〈経緯〉
2002624日、それは横領事件から始まった。総務部の経理係が17年間にわたって、8億円を横領。年間14億円の売上で、貯金の残高が400万円。仮に年収1000万円の人が銀行残高28571円しかない、そういうイメージ。経理係は専務の親友だからという油断があった。兆候はいろいろなところに現れていた。例えば、腕時計、コート、外車、競馬、など。
 手口は毎日の売り上げを懐に入れていた。一日の売り上げを業務終了時にドライバーが納金機に納入。それを翌朝、総務と経理が勘定。みんなが息抜きに部屋を離れた時に5万とか10万とかを盗んでいた。
 税務署から問い合わせの電話がかかってきたり、収支報告書の作成が遅れたり、サインはでていた。
 犯人は刑事裁判にかけられ、4年の実刑判決を受けた。
負債額は銀行618861420円、年金事務所234572378円、国税局50033701円、労基署20532471円、住民税432万7,200円、源泉税2036250円全部で930363420円。3日後は給料日で5千万円必要だった。社長はガソリン会社へ行って頭を下げ、無担保で、金を借りてきた。両者間には信頼関係が構築されていたから可能だった。資金繰りに困ったとき、頼れるところはどこか。当社が倒産したら、一番迷惑を被る会社、そこへ頼みに行くのが近道。銀行や年金事務所、役所、国税局、労基署、中央区役所に交渉に行った。返済計画、雇用計画全部作成して提出した。どこか一箇所が無理に納付を迫って、会社を倒産させたくはないとどこでも思っていた。自分が引き金を引きたくないから。粘り強く交渉することが肝要。

 〈再出発〉
銀行や役所と交渉が進んで、そして当時の役員、社長、専務は引責辞任という形で退職。そして新しい役員として30代の社長が就任、会社は再出発。会社は、売上がどんどん下がった。売上が下がると経常利益が減る。返済原資である経常利益が減っていき、お金が回らなくなった。それで、当時北1条西21丁目にあった土地と建物を処分して、移転。この売却で社会保険料と消費税を全部完納した。銀行の借り入れも全部返した。そして移転するための費用として銀行から2億円を新たに借りて、再出発。

2度目の危機〉
 手元に結構な運転資金も残った。収支は一応黒字だったので、社長はゴルフをはじめ、大本氏はススキノ通い。売り上げはどんどん下がり、首が回らなくなった。銀行からリスケを受け、管理職にはセミナーを聴講させ、ドライバーにはマナー講習を受けさせた。ドライバーの給与を見直し、消費税の延べ払いを申請した。そうこうしているうちに、国税局が差し押さえに来た。その後取引先にも現状が伝わり、倒産を余儀なくされた。
 破産の日程を決め、会社説明会を開いた。罵詈雑言を浴びながら、社長と二人で土下座。この会社説明会は従業員の怒りのエネルギーを発散させる恰好の機会で、避けては通れない。その後ワンストップサービスを開催してもらい、従業員の退職後の事務手続きをそこで処理することができた。破産後の膨大な事務処理には事務所の女性社員が手伝ってくれ、2週間で終えることができた。

〈倒産を防ぐために〉
 なぜ今回の倒産を防ぐことができなかったのか。税理士などが警告してくれたにもかかわらず、それを聞く耳を持たなかった。見て見ぬふりをしていた。会社の利益を上げるためにするべきことをしなかった結果だった。勉強して、きちんとした経営戦略を立てることが肝要だったのに、それを怠った。
 良い人生にしたかったら、勉強するのと同時に自分磨きをすること。師から教わった経営者の資質とは、内外に対する気配り、思い遣り、社員の良き相談相手、労を厭わぬこと、率先して難にあたること、先見性、信頼、責任感、信賞失罰。しかし一番大事なのは、社会の奉仕者であろうとすること。大本氏が考える経営者の心技体とは、心は人格を投与すること、技、わざは経営の戦略を勉強すること。体というのは健康増進。今後も自らの失敗から得た経験を多くの方に伝えていく。